溶融酸化物膜の力学的、機械的特性とその溶融酸化物の構造との対応を明らかにするため、ホットサーモカッップル先端に保持した溶融酸化物薄膜を一定速度で引張する装置を作成し、引張速度と薄膜の破断長さの関係を求めた。溶融酸化物膜の構造はラマン分光によりラマンスペクトルの変化を測定し、それに基づいて構造を検討した。特にその重要性にもかかわらず、明らかにされていなかった、酸素ポテンシャルの変化が酸化鉄を含む溶融酸化物の構造に及ぼす影響をラマン分光を用いて明らかにした。Na_2O-SiO_2系スラグK_2O-SiO_2系スラグおよびNa_2O-SiO_2-Fe_2O_3系スラグにおいて組成や温度を変えて引張試験を行ったが、いずれの系においてもある一定の引張速度以上では破断長さが引張り速度の2/3乗に比例して短くなったが、それ以下では破断長さは引張速度に依存せず一定であった。破断長さの2/3乗の引張速度依存はスラグ薄膜への液流れの流体力学的計算により説明できた。破断長さが一定になる原因を明らかにするためスラグ薄膜のラマン分光を行ったが、現在まで厚さによる変化は明確でなく、今後さらに精度を高めて検討を行う。破断長さ一定の値に関してNa_2O-SiO_2-Fe_2O_3系スラグの破断長さはNa_2O-SiO_2系スラグより長くなった。Na_2O-SiO_2-Fe_2O_3系スラグにおいて酸素ポテンシャルを変化させながら、ラマンスペクトルを測定し、その変化から、3価の鉄イオンはネットワークフォーマ-として存在していることが明らかになった。このことからNa_2O-SiO_2系スラグにFe_2O_3を添加すると破断長さが長くなるのは溶融スラグ中のシリケートのネットワークが大きくなるためと考えられる。
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