Pseudomonas Sp.由来のエステラーゼのC末端側に、10量体あるいは20量体のポリチロシンを結合した疎水化変異タンパク質を、遺伝子組み換え手法により合成した。変異タンパク質では、結合したポリチロシンの長さが長いほど疎水性が高くなった。また、変異タンパク質の構造は、ポリチロシンの結合によりα-ヘリックス含率が減少し、β-シート構造の増えることが示された。この構造変化のため、変異タンパク質の酵素活性は消失した。高い疎水性のポリペプチドの酵素への導入は、タンパク質の疎水性領域との相互作用が起こり、酵素活性の失活につながると考えられる。一方、subtilisin Carsbergをポリオキシエチレンで修飾した疎水化酵素を調製し、有機溶媒中での酵素活性と構造との関係を調べた。ポリオキシエチレンの結合により、ベンゼン中では、野生型の酵素に比べて150倍もの高い活性がエステル交換反応において認められた。このような高い酵素活性は、ジクロロメタン中でも観測されたが、水と可溶なジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン中では、酵素活性が減少した。これらの溶媒では、修飾酵素の構造が大きく変化していることから、酵素内のessential waterが奪われてしまうために酵素活性の減少につながったと考えられる。
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