研究課題
一般研究(A)
重症難病性感染症の起因株として薬剤耐性黄色ブドウ球菌が敗血症性循環ショック状態を引き起こすことが医学医療ならびに社会的問題となってきている。いわば人為的に選択されたMRSAのタイプの違いは、施設ごとの、あるいは地域ごとの医療状況(抗生物質の使用頻度)と密接にかかわり合う可能性が高いく、最近WHOでも国際的は監視組織の必要性が提起されている。本年度の本研究は、まず医学医療面に対する意義として、MRSAによる循環ショックの病態生理を明らかにすることから開始した。現在までの報告では、黄色ブドウ球菌でエンドトキシンや大腸菌で示されているような循環不全(低血圧)の誘発には成功していない。全国医療施設より集めたヒト血液由来のMRSA15株の継代培養を行いそれぞれの毒性分類、薬剤、耐性分類を行い、それぞれのMRSA菌株を用いて兎に菌血症状態を作成し、循環呼吸系、血液代謝系に及ぼす影響をそれぞれの菌に対して検討した。このような生理学的な変動に対して、従来から細菌学的になされている検査分類とは何らの相関関係を認めることが出来なかった。さらに、これらの強毒性MRSA株を用いて、循環反応を麻酔下の犬にSCR18株の静脈内投与でショックの誘発を行い、その上精成分に未知な毒性成分が含まれる可能性を示唆する成績を得た。我々のMRSA15株の内で3株にはそのポテンシャルをもったものが存在していた。この成績から、未知な毒性成分が培地の条件(温度による組成変化)によって釀し出される可能性を考慮し、細菌学の原点に立ち帰った検討をする必要性を認識して、基礎データーの集積を行っている段階である。菌株そのものも人体血液由来である上に、社会的影響が大きいことに鑑み、次年度計画での成績の整うまで一般公表を差し控えるべきと考えている。