研究概要 |
本研究の目的は,非接触三次元形状計測システムを用いて矯正歯科治療の客観的評価法を確立することである. 平成7年度は,非接触三次元形状計測システムを構築し,システムの計測の信頼性を明らかにする目的で実験を行った.平成8年度は正常咬合者を選択し垂直的な計測項目について分析を行った.平成9年度は咬合接触や水平面内における計測項目について分析を行った. 本研究から得られた新たな知見として、以下にその概要を示す。 1. 非接触三次元形状計測システム(非接触三次元形状測定装置、グラフィックワークステーション、三次元CADソフトウエアから構成される)をネットワーク化して構築し、矯正用診断模型の計測を試み、独自に開発した方法で不可視領域を削減した。 2. 各種の三次元CADシステムの処理速度と曲面表示特性について検討し、NURBS曲面は矯正用診断模型の複雑な形状を正確に表現できず、特に歯頸部や切縁では過剰にスムージングしてしまうことが示され、曲面を生成しない本システムの有用性が明らかとなった。 3. 計測の信頼性について.石膏平板と石膏球を用いて検討した結果、最大で約100ミクロンと小さいことが明らかとなった. 4. 日本歯科大学の学生と職員約3500名の中から最も優れた咬合を有する者を正常咬合者として30名選択し,Facial Axis point(FA point)を設定し,FA pointの垂直的変動について計測を行った.その結果.FA pointは垂直的に有意に変動していることが明らかとなった. 5. 正常咬合者の歯列の垂直的な変動を明らかにするためにSpeeの彎曲を計測し,本研究の被験者の歯列は従来報告されていた日本人正常咬合者に比較して平坦であることが明らかとなった。 6. 正常咬合者の歯列の水平面上での特徴について数学的に明示する目的で、咬頭頂に設定した計測点に多項式曲線を適合して検討した結果、2次多項式や6次多項式に比較して4次多項式が適していることが明らかとなった。 7. 上下顎の咬合接触状態について分析する方法について検討し、定量的な分析に応用が可能であることが示唆された。 以上の研究成果を要約すると、本研究で開発した非接触三次元形状計測システムは歯科矯正学の分野において歯や歯列の形態を三次元的にかつ客観的に分析することが可能であり、治療目標としての正常咬合者の咬合に関する分析方法や臨床的に有用な定量的データなど、多くの新たな知見が得られた。
|