本研究は、児童が他者(家族、教師、クラスの仲間など)から受け、また級友に与えている社会的支援が果たす心理的機能を解明することを目的とする。 女子児童(小学校4・5・6年生)約170名に対して、以下の3種の心理測定を行った。 まず、日常生活の中で受けている社会的支援の測定であり、このための尺度は、我々が独自に開発した。この尺度は、受けている支援の尺度であるだけでなく、級友に提供している社会的支援の尺度ともなる。今回は、この学級内の支援のやりとりについての結果を主に報告する。尺度は、日常の様々な場面で、級友の中の誰から社会的支援を受けるかを児童に評定させる形式である。この部分のデータは、最終的には、学級メンバー全員を行と列にとったマトリックスになる。周辺度数の合計により、個々の児童が級友から受ける支援と同時に、級友に与える支援についての観測値も得ることができるのが特徴である。 さらに第二に、児童の自尊心を測定する尺度による調査を実施した。この尺度は、自己価値感と学級内での心理的安定に関する2つの下位側面から構成されている。 第三に、学校適応を詳しく測定するための調査も実施した。このデータについては、現在分析中である。 現段階までの結果の分析から、学級内の支援のやりとりと自尊心の関係として、以下のことが明らかになった。級友から日常的に支援を受けることが多い児童ほど、学級内での心理的な安定が高いことが示された。これは従来の知見と合致する結果である。さらに、今回の調査によって、級友に対して日常的に多くの支援を与えている児童もまた、学級内での心理的安定が高いことが示された。この結果は、社会的支援の提供者としての子どもと、その発達的意義という新しい視点の重要性を示すものである。
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