研究概要 |
1)平成7年度に実施した全都道府県の調査結果を分析した結果,現在,婦人保護施設および一時保護所においては,売春防止法第5条にふれる,いわゆる本来ケースによる入所者はそれぞれ25.9%,18.1%と相対的に少なく,むしろ,いわゆる「虞れケース」が7〜8割を占めていることが明らかとなり,「本来ケース」の現代的様相もさることながら,「虞れケース」の内実,当該施設の現代的意味の検討が課題であることが確認された。 2)本年度は,上記1)を前提として,大都市圏の一時保護所を中心として,アンケート結果を踏まえ,「虞れケース」に重点をおいたヒアリング調査,および主に自由記述による補充調査を実施した。調査の主要項目としては,「虞れケース」の現状を踏まえ(1)「入所理由」,(2)「入所者の生活課題」,(3)「退所後の見通しと課題」等を設定した。 3)(1)については,ADLの課題が多く,知的障害の境界例の究めて軽度な場合や精神的課題との関連および「夫(内縁夫)の暴力からの避難」(特に一時保護所)の増加が指摘された。また,(2)では「定期的通院」のケースは少ないものの,「専門医の診断を要する」ケースはデータ以上に多いという印象がもたれているが,診断へと結び付けることがきわめて困難な現状である。(3)では6割以上が長期的なプラン,安心な見通しが立てられないケースであるとされた。この理由としては,キンシップネットワークやその他のネットワークの希薄さに加え,就労自立の困難さや精神的課題等が主に挙げられた。 4)以上の結果を総合的に考察すると,(1)〜(4)の項目に対する回答はいずれも,婦人保護施設,特に一時保護所の入所ケースの特徴として,人間関係が希薄であること,また人間関係の構築が困難な課題を抱えていること,かつそれは今日の女性・家庭問題と密接に関連することに集約され,他機関・施設との連携が課題として残されていることとなる。
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