研究概要 |
本年度は,本研究で実施した「婦人保護施設,および一時保護所の実態に関するアンケート調査」,「婦人保護施設,および一時保護所に従事する直接処遇職員の処遇意識に関するアンケート調査」,「大都市圏に立地する婦人保護施設を対象とした事例研究」,さらには,「関係機関・施設従事者へのヒアリング調査」について,多角的・総合的な解析を試み,当該事業の今後の課題の析出と可能性の模索をも含めて,その現状・現代的意義についての総合考察,を行い,報告書を作成した。当該領域の現状に関する基礎資料収集・事実発見に比重がおかれざるをえなかったという本研究の性格から,上記各調査において収集されたデータはきわめて広範なものとなっている。そこで,報告書を作成するにあたっては,当該事業の今日的課題の析出と今後の展望を重視するという観点から,以下の7点を軸として,データの解析を試みた。すなわち,1)長期利用者における高齢化の現状と対応,2)精神障害を含む健康上の課題を抱える利用者の現状と対応,3)知的課題を抱える利用者の現状と対応,4)短期利用者,特に緊急避難として一時保護所を利用する利用者の利用理由等の現状把握,5)短期利用者の健康上の課題の現状と対応,6)児童同伴利用者の現状と対応,7)長期利用者の退所への展望と,「家族等とのネットワーキングの調整」,「就労等利用者の課題克服への支援」,「関連機関・施設との連携状況」等,退所後に向けての対応等である。解析結果の特徴については成果報告書に譲るが,本研究で明らかとなった特に注目すべき課題を挙げるならば,児童同伴による一時保護所利用者の安全確保と,学習権等,児童の権利保障に関わる法的整備上,施設処遇上・他の機関・施設との連携上の課題等が挙げられる。
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