研究課題/領域番号 |
07451104
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安岡 治子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (90210244)
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研究分担者 |
島田 陽 東京国際大学, 国際関係学部, 教授 (00092239)
西中村 浩 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (80218172)
浦 雅春 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (20193956)
桑野 隆 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90143677)
中村 健之介 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10000613)
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キーワード | ユーラシア主義 / 民族主義 / 西欧派 / スラブ派 / 社会主義イデオロギー / 標準語論争 / 19世紀ジャーナリズム |
研究概要 |
本研究は現代のロシア文化を総合的に捉えるためには、ロシアにおける民族主義的思想の理解、とりわけいわゆる保守思想の理解が不可欠であるとの認識から出発した。旧ソ連時代の社会主義イデオロギーが求心力を失うにつれて、それに代わる統合理念として民族主義的な思想が大きな勢力になりつつあるためである。 かかる認識に基づき、当初の研究目的においては、(1)19世紀のスラブ派以降の歴史的文脈のなかで現代における保守思想、民族主義的思想の流れを位置づける、(2)旧ソ連国内だけではなく亡命思想家・文学者を含めた大きな枠組みのなかで現代の思想状況を探る、(3)哲学・思想の面だけに留まるのではなく、広く文学や言語の面における民族主義的思考に着目する、という目標を掲げた。 科学研究費補助金の交付を受けて行ってきた個別研究発表並びに共同討議はこうした認識の正しさを裏付けており、本年度の研究においてはさらに以下の諸点が明らかになった。すなわち、(1)ソ連共産党からロシア共産党へと名称を変えた共産党の指導部が19世紀以来のロシア保守思想に直結するユーラシア主義を標榜するに至り、民族主義的な傾向を強めつつあること、(2)言論・出版界においても19世紀ロシア保守思想を代表するレオンチエフやダニレフスキー、現代のレフ・グミリョフの著作が相次いで出版され、保守思想の見直し・再評価が大きなうねりとなっていること、(3)近年のポストモダンをめぐる議論においても民族主義的な歴史の再編が隠されたテーマとして伏在していること、などである。 それと同時に、一定の分野、とりわけ言語的な側面において民族主義や保守思想というテーマを扱うにはきわめて慎重な手続きが必要であることが認識され、引き続き研究の余地があることが痛感された。
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