ウランの三元化合物UNiSnの43Kで見られる相転移が、半導体-金属相転移と磁気相転移の重なった複合転移であると見られていたが、われわれは、構造の変化も伴ったものであるらしいという予備的実験証拠を得ていた。本研究は、これを確認するとともに、輸送現象・磁性・構造におけるそれぞれの不安定性がどのように絡み合っているのかという問題を解こうとするものである。本年度、研究計画に従っておこなった研究の実施と研究成果を次にまとめる。 1.磁場中低温X線回折装置の整備:本研究の中心的な実験手段となる磁場中構造解析装置の立ち上げを最優先して行い、磁場中で3.5〜300Kの温度範囲で、十分な精度で標準試料のスペクトルが得られることを確認した。このような磁場中低温構造解析の出来る装置は、わが国では珍しい。 2 UNiSnの磁場中X線回折:複合相転移点43Kを中心に1Tの磁場から構造解析を開始している。 詳しい構造解析により、立方晶から正方晶への構造相転移が43Kで起きていることを確認した。 3 磁化・比熱・メスバウアー分光のデータと比較検討:これまで得たゼロ磁場および低磁場でのX線構造解析の結果を、磁化・比熱・メスバウアー分光の結果と合わせて、結晶場モデルで解析し、強相関電子系に関する国際会議で発表した。なお、CeをThで部分置換した系で謎となっていた振る舞いも、構造の詳しい解析によって、2相分離し易いことに原因があることを突き止めた。 4 弾性係数の測定:磁場中での弾性係数の変化を超音波をつかって測定開始している。 以上、本年度の研究はほぼ計画通り進行し、平成8年度に引き継いで、予定通りUNiSnの複合相転移を明らかにする研究は完了できる見込み。
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