研究概要 |
軟体動物の現生種(キサゴ、ホタテガイ、ワスレガイ、カキ)と化石種(トウキョウホタテ)について殻体タンパク質を、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)により異なる分子量をもつタンパク質ごとに選別して抽出した。変質している可能性の高い結晶間に挟在するタンパク質を漂白して除去したのち脱灰して結晶内のタンパク質のみを取り出した。抽出したタンパク質は、特定のアミノ酸の部位でタンパク質を切断する性質を持つプロテアーゼを用いて切断し、得られた断片の長さの変異からタンパク質中のアミノ酸配列の変異を推定した.化石と現生サンプルのタンパク質の切断パターンを比較したところ、ほとんど一致しており、このことから続成作用の影響はすくなく、化石中に極めて良好にタンパク質が保存されてきたことが明らかになった。次に、含まれているタンパク質の比較から,これらの種の系統の推定を試みたところ、カキとホタテガイが最も近く、キサゴがもっとも遠いという結果が得られた。これは、18S_1・DNAによって求めた系統関係と一致した。 長野県野尻湖層群の泥炭層から得た更新世の化石昆虫と、静岡県上土遺跡より得られた完新世の昆虫遺体(セマルガムシ、ゴミムシ類)から、DNAを抽出し、PCR法によりミトコンドリア16S_1・DNAと核18S_1・DNAを増幅した。その結果約130塩基対のDNAの増幅に成功した。これらのうち18S_1DNAの塩基配列を決定した結果、化石昆虫のDNAは、現生の同一種または近縁種のDNAに最も近いことが分かった.このことから化石昆虫のDNAが増幅されたと考えられる.
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