研究課題/領域番号 |
07454230
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
小泉 修 福岡女子大学, 人間環境学部, 教授 (50094777)
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研究分担者 |
美濃部 純子 福岡女子大学, 人間環境学部, 助手 (80190718)
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キーワード | 散在神経系 / ヒドラ / 神経回路網形成 / 発生神経生物学 / ペプチド / 免疫組織化学 / 抗体作製 / 神経分化 |
研究概要 |
1。再生系と再導入系と正常系の3つの異なった実験系において神経網形成を調べ、それらの比較検討によって、重要な制御要因を明らかにする研究について:神経細胞が全然無い状態から神経細胞の分化と神経網形成が進行する再導入系と神経細胞が前もって存在している状態で神経細胞の分化と既存の神経網への取り込みが進行する正常系を比較すると、既存の成熟神経細胞の神経分化・神経網形成に対する寄与を検討出来る。また、上皮組織の形態形成と伴に神経網形成が進行する再生系と上皮組織は常に一定の状態で神経網形成が進む再導入系との比較によって、神経網形成における上皮組織の関与を検討できる。この各種の系での神経網形成の比較検討を昨年に引き続き行い、各部位・各神経集団における主要な制御要因を細胞レベルで明らかにすることができた。 2。ヒドラの発生制御に関与するペプチド性シグナル分子の大規模スクリーニングのプロジェクトについて:大規模で系統的なヒドラよりのペプチドの検索を開始、その結果338種のペプチドを分離し、222種のペプチドのアミノ酸配列が決定出来た。32種のペプチドの化学合成を行い、その中で、神経網形成にとって興味あるペプチドが得られた。ひとつは、C末にLPWの共通配列をもつ4種のペプチドメンバーよりなる、PWファミリーで、神経細胞の分化を抑制する活性のあることが判明した。また、1種のペプチドHym355は、神経分化を促進することが判明した。このプロジェクトについては、最初の論文が、″Systematic isolation of peptide signal molecules from hydra. I. LWamide and PW families″の題で、Proc. Nat. Acad. Sci. USA(1997)に掲載された。更に、この2種のペプチドの作用機作を詳細に検討中である。 3.ヒドラより分離・構造決定したペプチドの抗体作製について:ヒドラの構造決定・機能同定をおこなったペプチドについて、その細胞局在を明らかにする目的で、それらの抗体作製を行った。まず、C末にGLWamideの共通配列を持つ7種のメンバーよりなるLWaペプチドファミリーについて抗体作製を行い、これらのペプチドがヒドラの体全体に分布する神経細胞を染色することが判明した。また、2で述べた、PWファミリーとHym355に対する抗体も作製した。LPW抗体は、上皮細胞を染色し、Hym355抗体は神経細胞を染色した。LPWペプチドは、上皮細胞から分泌されて神経分化を抑制する環境因子で、Hym355は成熟神経細胞から神経細胞の分化を促進する因子と思われる。更に、5種の神経部分集合に特異的な抗体が得られ、これらを用いて、ヒドラの神経網の基礎的なChemical anatomyを行った。
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