鞭毛・繊毛運動をはじめとする微小管依存の細胞運動において、ダイニンはそのモーターたん白質として重要な役割を演じている。軸系ダイニン分子については、哺乳類、魚類、ウニ精子鞭毛のものは2本の重鎖に相当する2頭構造であり、原生生物のクラミドモナス鞭毛のものは3本の重鎖に相当する3頭構造である。本研究では外腕の形態観察を植物界にも拡げて行われた。緑藻のオオハネモの配偶子鞭毛では、外腕はクラミドモナスと同様3頭構造であった。同様な結果は渦鞭毛藻類でもえられた。しかしミドリムシなどでは外腕はみつからなかった。コケ植物やシダ植物の精子鞭毛には外腕が存在しない。これらの結果をまとめて、今後外腕ダイニンにかかわる進化やこの分子あるいは各重鎖の役割を総合的に考えてみる予定である。 ウニ精子外腕ダイニンは2つの重鎖の外に3つの中間鎖を含んでいる。本研究においてすべての中間鎖遺伝子をクローニングし、その構造と考えられる機能について報告した。 なお、周辺微小管のダイニンの働きによる滑りについては従来一方向のみにおこると考えられてきたが、われわれは滑りが両方向におこりうることを示す根拠を得て報告した。
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