研究概要 |
1.Ti/TiO_2系の組成変調多層構造薄膜の作製を昨年度に継続しておこなった.純度が99.98%のTiターゲットを使用し、Ar流量を一定にし、O_2流量をコンピューターで所定の値に制御することにより組成変調型多層膜を形成した。得られた薄膜の組成はオージェ分析法で評価した.O_2流量の変調を,昨年度の研究で明らかとなったヒステリシス効果,酸素拡散効果を考慮しながら最適化することにより,膜深さ方向の酸素の分布がサイン波に近い組成変調多層構造薄膜を形成した.これにより,強いヒステリシス効果を持つTi-O_2系リアクティヴ・モジュレーションスパッタリング法においても,組成変調型多層膜を形成できることがわかった。 2.Ti/TiN系の組成変調多層構造薄膜の作製を目的として,Ti/N_2系反応性スパッタリングにおけるヒステリシス効果の解析を実施した.Ti-TiO_2系の反応性スパッタリングに比較して,ヒステリシス効果は弱いことが明らかとなった.この結果に基づきAr流量を一定にし、N_2流量をコンピューターでサイン波的に制御することにより組成変調型多層膜を形成した。 3.Ti/TiN系の組成変調多層構造薄膜において,多層薄膜の周期構造と微小硬さの関係について検討した.膜の周期を5nm,7.5nm,10nmおよび20nmと変化させ,総膜厚を400nmとしガラス基板およびアルミナ基板上に薄膜を形成した.得られた膜の微小硬さはエリオニクス株式会社製ENT1040微小押し込み硬さ試験機を用いて測定した.測定の結果,多層構造周期が10nmのTi/TiN系の組成変調多層構造薄膜の硬さが最も大きくかつTiN単層膜よりも大きくなることがわかった.これは,周期構造の形成により内部応力が大きくなることに関連すると思われる.周期が小さい場合には多層構造が不明瞭となり,硬さの多層構造への依存がなくなるのではないかと思われる.
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