研究概要 |
本研究の目的を要約すると,金属板の表面に油膜やさび等の汚れが着いたとき,その金属板の裏側の電子状態がどのような摂動を受けるかを調べるというものである.本測定のためには仕事関数測定用の波長可変紫外光源と検出器が必要であったが,購入予定にしていた紫外光源およびモノクロメータが,PL法の影響によって販売中止となった.そこで他の方法を探ったところ,air-UPCという装置が使用可能であることがわかり,次年度に導入予定である. また実験の進行中に本研究で製作した装置に絶縁材料を装着し,試料電流検出の代わりに高電圧を加えたところ,強力なX線の発生が認められた.この方法を用いれば,X線管を必要とせずに容易にX線を発生することができる.従って,この新しい現象は,単に新しいX線発生方法となるばかりではなく,新しい元素分析方法になることがわかった. さらに,X線を専用のX線検出器で検出しなくとも,X線照射時の試料に誘起される電流を測定することによって検出する方法を開発した.この方法は,電流というバルクに依存する物理量を測定しているにもかかわらず,表面状態に関する情報を得られることが証明できた.この試料電流測定の応用分析として,シリコン基板上に蒸着した50Åのフタロシアニン薄膜を測定し,表面層状構造とその化学状態のキャラクタリゼーションを行うことができた.
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