キーワード | 表面分析 / 非破壊分析 / 電圧を発生する部分,絶縁体,真空の3条件がそろえば,このような帯電によるX線を発生させる事ができる.従って,小型の電圧発生部を工夫すれば,小型のX線発生装置を作る事ができる.一方で,真空をやぶれば,X線発生は止まるので安全である.放射性同位元素のように法的規制を受けず,しかも,被曝する危険や,廃棄の点で利便性のある放射線源としての応用の可能性もある. |
研究概要 |
金属の針電極(-)と板状電極(+)を数ミリメートル離して,10^<-5>Torr程度の真空中にいれ,3000Vの直流電圧を加えると,そのままでは何も起こらないが,この真空中でフィラメントに一旦電流を流して電子を供給すると,金属針先の仕事関数が低下し,針先から連続的に電子が放射され,+電極に衝突してX線を発生させる事を発見した.従来電界放射を生じさせるためには,高電圧を針状電極にかける場合が多かったが,今回の発見のようにわずかの電子を初めに供給する事によって,3000Vという比較的低い電圧でも,安定した電界放射を生じさせることが分かった.本方法によって発生した電子線を用いて,+極に未知物質を置く事により,特性X線発光現象を利用した元素分析が行なえる可能性が示された. 一方,絶縁体を上述の電極の間に挟み3000Vの電圧を加えると,3×10^<-2>Torrから4×10^<-2>Torrという非常に狭い範囲の真空度でのみ絶縁体表面からX線を発生することを発見した.実験は真空中容器に,錠剤状にした食塩を入れ,電圧をかけた.真空は10^<-6>Torrから大気圧まで変化させ,食塩のかわりにガラスや金属酸化物などを用いたり,真空中の残留ガスは空気・窒素・アルゴンなどに変えたが,X線はこれらの条件にはあまり影響されず,上述の圧力範囲の真空度でのみX線の発生が測定できた.電子・イオン・プラズマなどが,電極や絶縁物表面に衝突してX線を発生させていると考えられる.
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