本年度は、3ヵ年の研究の総合的とりまとめとして、農村景観計画理論の構築に焦点をあてて研究を行った.農対景観の変容と景観ユニット、景観の構造と景観評価、景続評価法の3つの視点から検討を加えた. また、景観評価については、新たに歴史的伝統的文化的景観を対象とした調査を実施した 具体には、埼玉県三好町三富新田を対象地域とする地域住民による景観評価を行うとともに、その景観を維持し保全し管理する主体である農業経営者を対象とするインタビュー調査も実施し、歴史的伝統的文化的農村景観の保全について考察を行った.評価対象となる三富新田の近隣に居住する都市住民は歴史的伝統的文化的農村景観を極めて高く評価していることが明らかになったが、他方、それを今日まで維持保全し管理を行ってきた主体である農業経営者にはそれを維持保全することに対する極めて消極的態度が見られ、農業所得を補完し生計を安定させる経済的措置がその景観の維持保全にとっては不可欠であることが明らかにされた. さらに、昨年度に引き続き、茨城県常総台地(鉾囲町)において、1873年、1940年、1975年およぴ1995年の4時点におけるオキュペイション・レベルとしての土地利用を把握し、土地利用およびその変化とアピオティック・レベルとしての自然立地単位との関係を検討するとともに、農村景観におけるユニット性の存在につて再検討した.農業経営の拡大等農業経済活動の発展に伴う農村景観の変容が明確に把握されたが、その変容、すなわち農業経済活動がもたらす景観の変容には未だ景観のユニット性を確認することはできたが、しかし、戦後の高度経済成長に伴う都市化が、そうした景観のユニット性を撹乱し破壊していることが明らかにされた.すなわち、鉾田町のように大都市の影響から隔離されているとみなされる遠隔農村地域といえども、農業集落における宅地の増大が景観変容の大きな要因であるとともに、景観のユニット性を崩壊させる要因ともなっている.
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