研究概要 |
我々がラット肝から同定し、cDNAクローンを得た7H6抗原(以下Barmotin)を中心とし、さらにラットOccludinの全長cDNAを得、これらタイト結合蛋白質の病態における意義についてヒト大腸癌、およびラットの実験的閉塞性黄疸モデルを用いて、分子レベルで解析した. (1)ヒト大腸癌におけるタイト結合蛋白質(Barmotin,Occludin,Zo-1)の発現、細胞内分布と、癌悪性度の相関;大腸癌における細胞極性の異常は癌の生物学的悪性度に相関する.細胞膜上の分子の拡散を規定し、細胞極性の維持に当たるフェンス機能を担っているタイト結合の蛋白質(Barmotin,Occludin,Zo-1)の発現様式と大腸癌の悪性度を検討した.高分化癌においては3つのタイト結合分子は正常腸上皮に類似の分布を示した.しかし上皮形態を失った低分化腺癌ではOccludinが完全に欠失し、Barmotinも著しい発現低下を示した.これらの研究から、大腸癌においてタイト結合分子の発現と内分布の異常が癌の悪性化にともなって起こること、およびこれらタイト結合分子は、癌悪性化の過程において異なった制御を受けていることが明らかとなった(Med.Electron.Microsc.,31,in press,1998). (2)実験的閉塞性黄疸におけるタイト結合分子の発現調節機構;肝細胞において、胆汁はタイト結合によって類洞の血液と分離され、毛細胆管のタイト結合バリアの破綻は閉塞性黄疸を起こす.ラット総胆管結紮モデルをもちいてタイト結合分子の発現を検索し、閉塞性黄疸の進展および毛細胆管バリアの機能低下にともなってOccludinの発現上昇が観察された.さらに、閉塞性黄疸早期の可逆的な時期に、毛細胆管バリアの可逆性とOccludinの発現が相関することを見いだした.このことから、毛細胆管バリアが胆汁流出の障害によって可逆的に調節され、その調節機構にOccludinが重要な働きをしていることが明らかとなった.
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