研究概要 |
肝胆膵腫瘍外科における血管合併切除,血行再建に関して、イヌの門脈,下大静脈に挿入した各種代用血管およびその内皮化の有用性を検討し、人工血管の内皮化に際し、内皮へのインスリン遺伝子導入による血糖調節の可否を検討することが本研究の目的である。 門脈,下大静脈に挿入した代用血管の開存性は同種静脈,ePTFE,内皮化代用血管の間に有意の差を認めなかった。また、インスリン遺伝子導入に関してはアデノウイルスベクターにヒトプロインスリン遺伝子を組み入れ、ヒト臍帯静脈内皮細胞で高い導入効率と蛋白発現を確認し、それを用いてストレプトゾトシン(100mg/kg)で作成した糖尿病ラットに経脾経門脈的に遺伝子導入を行ったところ、血糖値を低下させ、ストレプトゾトシン誘導型の糖尿病に随伴する低蛋白、低アルブミン血症を有意に改善させた。また、イヌを用いて膵全摘を行い、外科的糖尿病を作成すると輸液とインスリン皮下注を行っても血糖コントロールは不十分であり、経口摂取もできず一週間あまりで全例死亡したが、インスリン遺伝子のアデノウイルスベクターを経脾経門脈的に投与すると経口摂取良好で輸液も不要であり、長期生存が得られた。これらの結果からわれわれの作成したインスリン遺伝子アデノウイルスベクターのin vivoでの有用性を確認した。 補足的に肝胆膵腫瘍外科における血行再建に関する実験的研究としてラットを用いた門脈遮断後の再潅流傷害に対する抗ICAM-1抗体の有用性を報告し、血管内皮細胞と好中球の接着に関してヘパリン様グリコサミノグリカンが抑制的に作用することなどを報告した。
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