RB 遺伝子プロモーター抑制因子の同定 網膜芽細胞腫遺伝子(RB)の失活により網膜芽細胞腫は発生する訳であるが、その失活の機序としてRB遺伝子のプロモーター領域の当然変異や異常メチル化が重要であることを示してきた。このような場合にはRB遺伝子産物であるRBタンパク自体は正常であり、量が減少しているために網膜芽細胞腫に罹患することになる。したがって、脱癌を試みるとすれば低下しているRB遺伝子プロモーター活性を再び増強させるか、少量ながら残存しているRBタンパクを活性化するかであろう。そこで私達はRB遺伝子プロモーターを調節する因子を検討する目的で、RB遺伝子プロモーター活性が著明に増強する系を検索した。その結果、マウス筋細胞の分化時にRB遺伝子プロモーターが著明に増強することが見いだされた。そこで、その活性化に重要な部位が同定するために、種々の突然変異をRB遺伝子プロモーターに導入したプラスミドを多く作成することにより、分化に反応するRB遺伝子プロモーター部位を決定した。その結果、ATFという転写因子の結合部位が重要であることが判明した。ゲルシフトアッセイなどを用いて子細に検討した結果、未分化時にはATF-1が抑制的に働き、分化時にATF-1が減少するために、抑制が解除されプロモーター活性が増強することが明らかとなった。 この研究の意義及び今後の可能性 RB遺伝子プロモーターを活性化させる上において先ず、その活性化部位を同定することは極めて重要である。今回、ATF結合部位に対してATF-1が抑制的に働くことが見いだされたことは、今後ATF-1に対する抑制因子がRB遺伝子プロモーター活性の増強因子として有用であることを示唆し、興味深い。
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