研究概要 |
本研究では,とくに受容体刺激に基づくCa^<2+>の細胞内反応に焦点をしぼり,生体内での機能的な面から明らかにすることを目的としている。したがって,よりin vivoに近い反応を調べるために,初代培養細胞,確立した細胞系,脳切片を用い,種々の刺激因子による細胞内Ca^<2+>上昇に続く細胞内反応を調べた。 生後第1日目ラット大脳から,アストロサイトを分離,精製して培養し,95%以上の純度を持つアスロトサイト標本を得た。培養アストロサイトを用い,グルタミン酸刺激によってCaMキナーゼII活性化反応,自己燐酸化反応,基質であるグリア線維性酸性蛋白質(GFAP),ビメンチンの燐酸化反応を証明し得た。免疫組織化学法で調べると,酵素は,核内に豊富に存在することがわかった。核内のCaMキナーゼII作用を調べる目的で,遺伝子発現に対する刺激効果を調べた。転写因子C/EBPはα,β,γ,δイソ型を持っている。C/EBPβが下垂体細胞でCa^<2+>に反応し,CaMキナーゼII基質になることが明らかにされた。本研究では,a)培養アストロサイトにおいてC/EBPβがCaMキナーゼII活性化反応をおこす同じ条件下でmRNAの変化を時間的経過の中で調べた。b)細胞をホルボルエステルと16時間あらかじめ前処理し,PKCをダウン調節した。この細胞に対するグルタミン酸を投与しC/EBPのDNA結合活性の増強を調べた。c)細胞をあらかじめ^<32>P-オルト燐酸でラベルしておき,グルタミン酸を投与して,CaMキナーゼII自己燐酸化反応とC/EBP燐酸化反応を調べた。これらの研究によって,Ca^<2+>,CaMキナーゼIIがC/EBPそのものおよびC/EBP転写活性によって活性化される下流領域への効果を調べることができ,CaMキナーゼIIの遺伝子発現への関与を明らかにする糸口を得た。
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