研究概要 |
本研究では,とくに受容体刺激に基づく細胞内反応に焦点をしぼり,生体内での機能的な面から明らかにすることを目的としている。よりin vivoに近い反応を調べるために,初代培養細胞,継代培養細胞,確立した細胞系を用い,種々の刺激因子による細胞内応答を調べてきた。 生後1日目ラット海馬ニューロンから,定法に従い,アストリサイトを分離した。精製されたアストロサイトは,95%以上の純度を持ち,ニューロンの混入を認めなかった。グルタミン酸および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を投与し,mitogen-activated protein Kinase(MAPキナーゼ)の活性化反応を調べた。a)グルタミン酸投与により,MAPキナーゼ活性化反応を認めなかった。b)bFGF投与によりMAPキナーゼは活性化された。c)bFGFによるMAPキナーゼ活性化反応と同じ時間的経過でDNA合成が増強された。bFGFが細胞増殖を起こし,その反応にMAPキナーゼの関与することを示している。d)bFGFの刺激によって,MAPキナーゼは活性化反応に伴い,細胞質から核へ移行することがわかった。e)ジブリチルcMAP(dbcAMP)および内因性にcAMPを産生させる因子(イソプロテレノール)はMAPキナーゼ活性化反応を阻害した。f)dbcAMPおよびイソプロテレノールの投与は,Rafl燐酸化反応を強く抑制したので,MAPキナーゼ活性化反応の阻害は,Raflを阻害することによって惹起されていると考えられた。これらの結果は,cAMPがアストロサイト細胞増殖を抑制するのは,MAPキナーゼ活性化反応の阻害および核への移行の抑制を介して行われていると示唆された。cAMPの作用部位はRaflあるいはその上流にあると結論された。
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