研究概要 |
1992年10月に出現した新しいコレラ菌O139ベンガル型は、またたく間にインド亜大陸に広がり、近隣諸国へも広がった。カルカッタ市立伝染病院では、1993年の前半、入院コレラ患者からO1型菌が全く分離されなかった。しかしながら、その後1993年末頃から、再びO1型菌が分離されるようになり、1994年〜1995年では、コレラ患者から分離されるコレラ菌のうち、10〜20%がO139ベンガル型である。 O139ベンガル型菌のワクチン開発のために、まず、コレラ毒素、ZOT, ACE, HLYなどの各種下痢原因毒素遺伝子を持たないO139ベンガル型菌を野生株のなかから探すことと、上述の抗原変換がいかなる機構で起こるかを明らかにする必要がある。 まず無毒株の探索については、患者由来の176株のO139ベンガル型菌について調べたが、すべての菌株がコレラ毒素、ZOT, ACE, HLYのすべての毒素遺伝子を保有していた。 次いで抗原変換については、まずO1およびO139抗原合成に特異的な遺伝子領域を明らかにし、そのぞれのプローブを20〜30種ずつ作成した。さらにパルスフィールドゲル電気泳動によって、O139型菌流行以前のO1型菌に、RFLPが類似の菌株が存在しないかどうかを調べたが見つけることはできなかった。ところが、1993年後半から流行しはじめたO1型菌のRFLPは、O139流行以前のO1型菌のRELPとは全く異なり、むしろO139型菌のRFLPと類似していた。このことは、1993年後半から流行しているO1型菌は、以前のO1型菌が再流行したのではなく、O139型菌から抗原変換したO1型菌であることを示唆しており、ワクチン開発菌株の選定とワクチン開発そのものに重要な情報を提供した。
|