新型コレラ菌O139によるコレラは、一時患者数が減少したが、1996年秋からインド亜大陸で再び猛威をふるいつつある。この予防には、O139型に有効なワクチンの開発が必須である。 (1)生菌ワクチン候補株の選定:コレラ菌の病原因子として報告されているコレラ毒素(CT)、 ZOT、 AXE、 HLYを保有していないO139型菌を作成するため、これらの毒素遺伝子のdeletion mutantを作成した。 (2)死菌ワクチン候補株の作成:従来、死菌ワクチン株としては、ホルマリンまたは加熱死菌を使用しているが、防禦抗体産生能に問題があった。効率よく防禦抗体を産生する抗原として、コバルト60照射により殺菌したコレラ菌は、運動性を保持していることを見出し、従ってM細胞への定着がホルマリン死菌に比べて著名であることを確認した。 (3)粘膜免疫を誘導して、効率のよい防禦効果を発揮させるためには、抗原投与に際してのアジュバンドの選択が重要である。コレラ毒素のAサブユニットの活性部位のアミノ酸部位特異的変異法によって置換した無毒変異毒素が、強いアジュバンド活性を持つことを見出した。コレラ毒素由来の無毒変異毒素による粘膜免疫の誘導はThl由来であり、毒素原性大腸菌の易熱性エンテロトキシン(LT)由来の無毒変異毒素による粘膜免疫の誘導がTh2由来であることと異なっていることがわかった。 (4)O139型LP合成に関与する遺伝子領域を明らかにし、その解析を行った。
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