研究課題
本年度はfMRIと脳波を同時記録して、脳機能検査において基本となる視覚領野と運動領野について試験的な計測を行って、それぞれ刺激による賦活を描出し、通常のMRIによる形態学的データと照合して賦活部位を詳細に同定した。この経過を通して、脳波とfMRIを同時記録するシステムの改良を行って、これについては特許申請を行うこととした。ただし、得られたfMRIのデータはS/N比が必ずしも十分でなく、なお改良の余地を残している。近赤外分光計測法については、S/N比を向上させ、また、24チャンネルの同時記録が可能なシステムとあり、そのための、光プローブの頭部への固定装置や視覚刺激装置の改良を行って、高精度で賦活脳部位を分かり易い画像として描出することに成功した。これは、現時点では世界的にみても報告がなく、画期的な成果である。試験的には動画を見ている時の脳の活性化部位の計測も行ったが、1例のみであり、確実な結果といえるまでには至っていない。しかし、今後自然な条件で人間が視覚映像を認知する場合の脳機能を計測しうる可能性を示したもので、発展の余地の大きい計測手技を確立した。また、視覚刺激の全くない暗黒条件においても、開眼してものを見ようとすると、視覚領野が軽度賦活され、LEDのフリッカーやビデオ映像として賦課した同心円型のパターンリバーサルの視覚刺激によって、より強く視覚領野が賦活されることが分かった。このような試験的計測を通して、これらの方法の有機的な組み合わせ方とその補助システムおよびそれらに合わせた視覚刺激装置、聴覚刺激装置を開発・改良し、これらが、障害児教育において有用な脳機能の検査として使用しうることを明らかにした。
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