研究概要 |
本研究課題は,癌の光線力学的診断(Photodynamic diagnosis: PDD)や光線力学的治療(Photodynamic therapy: PDT)用光源としてパルス動作プラスチック光ファイバ増幅器(Plastic Optical Fiber Amplifier: POFA)を提案し,癌組織の性状診断および治療効果を検討することを目標としている.平成7年度はその第一ステップとしてPOFAの動作特性を評価するとともにPOFA出力光とPDD,PDT用光感受性物質との光化学相互作用を検討・評価した.POFAドープ用色素として特に高性能(吸収断面積や誘導出面積断導が大きい)な色素であるRhodamine 6G (R6G)を使用した.このR6G-POFAの動作波長域は,励起光源としてNd:YAGレーザの第二高調波光を使用した場合,波長500nm後半代に位置している.液体色素レーザから得られる微弱な信号光を増幅するアンプ型POFA及び,励起光のみを入射した際に得られる増幅された自然放出光(Amplified Spontaneous Emission: ASE)型POFA(光学系が非常に簡単になる)の動作特性を評価した結果,共にキロワット級(コア径:500μm)の出力を得ることに成功した.この値は,既存のPDT用レーザと同一オーダーの出力であった.このR6G-POFAの出力波長帯に吸収を有する亜鉛系ポルフィリン化合物の中からZinc (II) 5,0,15,20-Tetraphenyl Porphyrin (ZTP)を用いて,POFA出力光励起による光感受性物質の光化学特性を評価した.POFA出力光をZTPへ照射し,波長600nm代に光感受性物質から発生した蛍光を観測した.実際のPDD,PDTでは癌組織の新陳代謝の速度差,すなわち光感受性物質の組織選択性により診断や治療を行う.癌組織選択性を有した光感受性物質の探索を行うことにより,POFAを用いた癌の診断が可能であることを明らかにした.また,一般にPDTは光感受性物質を光励起した時の分子内のエネルギー遷移による活性酵素発生により治療を行うものである.POFA出力光をZTPへ照射した際,活性酸素が産出されることをルミノール反応を用いて検出し,PDT-POFAの可能性を示した.
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