本研究の目的は、一酸化窒素(NO)の測定を可視的に行うことであった。しかし、当初予定した機器の購入に必要な予算配分が受けられず、初年度に必要な機器のいくつかが購入不能であった。したがって、来年度の予算配分を待つよりは、若干方針を変更し、本年度の活動を、生体におけるNO測定の研究に費やした。NOの測定法は現在普及している化学発光法がもっとも鋭敏であるが、残念なことに分析機器の取扱が比較的困難である。また、単なるサンプルの測定とは大いに異なり、サンプリングの時点から細心の注意が必要となる。NO測定法の簡素化と確実化は研究者にとって極めて重要である。そのため、幾つかの測定器の比較実験をおこない啓蒙的な論文を作成し循環制御に掲載した。また、様々な組織からのNOの測定を試みた。これは、次年度におこなうNOの可視化のために必要な組織モデルを探すためであった。実際に、我々がおこなった測定対象は、大腸(ヒト、イヌ)、胃(ヒト)、肝臓(ラット)、眼球(ウサギ、ヒト)、鼻(ヒト)、皮膚(ヒト、ブタ)などである。このうち消化管のNOは潰瘍性大腸炎の患者などからかなり高濃度のものが検出された。また、幸いなことに肝臓と鼻のNOがともに数ppmをこえるほど高いものであることがわかった。これらの調査の結果は、昨年日本消化器病学会や、日本肝臓学会などで、発表することができた。また、昨年国際NO生物学会でも発表し、3編の論文になり、本年中に単行本として掲載される。また、鼻のNOの研究は、本年3月雑誌掲載予定である(European Respiratory Journal)。眼球角膜由来のNOの測定法に関する論文は現在作成中であり、本年夏に国際学会で発表予定している。
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