1.NO視覚化の研究状況(平成7年5月-平成8年2月) 当初の研究目的は一酸化窒素(NO)を様々な方法で発光させて、その定量的測定が可能であるかどうかを検討することであった。発光方法として、ルミノールを用いることが当初試みられたが、平成7年9月に、英国のMoncadaのグループがルミノールを用いた実験装置を実用化したとの発表を行った。これで、我々が試みようとしていた実験装置の開発はスタートしてわずが3カ月ほどで、その使命を終わらせられてしまった。残念なことに、彼等の実験装置の機器は我々が発注したものと同じものであった。 2.方針変更後のNO視覚化の研究状況(平成8年3月-平成9年3月) アイデアの勝負といってもよい視覚化の競争は簡単に敗北を喫してしまったため、我々は、より精密で迅速なNO定量化の方に活路を見いだそうとした。特に呼気NOの測定では、我々のグループはまだ世界的な水準にあることを考慮して、呼気ガスのNOとCO2などを同時に測定できるシステムの開発に力を注いだ。結果的には、測定をリアルタイム化し、またオンラインでデータをコンピュータに取り込むことに成功した。その結果、微量なNOの変化が正確に把握できるようになり、解析も正確さを増した。この装置の開発の過程で、オンライン化するための入力信号のA-D変換による同期化を行うソフトウエアを開発することができたのは、大変意義深いものであった。このソフトは、いづれ誰もが使えるように市販することになると思われる。本装置を用いて、現在健常者や呼吸器疾患の患者の呼気NOの測定を鋭意推進している。このシステム化した装置のアイデアは、信号の同期装置が簡便であるという点で、現在スイスのEcoPhysics社が開発を進めている装置よりも優れている。コンピュータの画面上で、リアルタイムに変化するNOの状況が観察されるという意味では、これもある意味での視覚化の一つであろうと思われる。
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