健康な男女大学生を対象に、日常食品について、その物理的性質のうち、形や硬さの違いが嗜好に影響するか否かを調べた。また、早食いの人と遅食いの人ではその嗜好に違いがあるかどうかをも検討した。 テクスチャーの明らかに異なる食品3種、ニンジン、カマボコ、トウフを試料とし、立方体の体積(1.5×1.5×1.5cm)を基準とした同体積の直方体、円柱、三角柱、星型柱と5種の形状試料を用いた。試料のテクスチャーはテクスチュロメータを用いて客観的に測定を行った。形状の嗜好度は一対比較法を用いた。以下の結果が得られた。 1.嗜好に及ぼす食品の形状の影響は、硬いものほどはっきり現れた。 2.硬いものでも軟らかいものでも、三角柱、星型柱に比べ円柱、直方体、立方体が好まれた。 3.嗜好尺度値の高い円柱、直方体、立方体の試料について、最終嚥下までの咀嚼回数が少ないいわゆる早食いの人は3種の形状に嗜好の違いがほとんど認められなかったが、咀嚼回数の多い遅食いの人は円柱を好んだ。 以上より、食品の形状が嗜好性に強く影響し、その嗜好性は硬さによって異なることが示唆された。また、早食いの人と遅食いの人では食品の形状の嗜好に違いがあり、形状の嗜好には咀嚼パターンと関連する個人差があると考えられる。
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