研究概要 |
本年度は、以下の研究方針で臨んだ。 1.昨年度の研究成果を再確認し、今後の指針とする。 2.ミクローマクロ問題にかかわる既存の業績を整理する。 3.モデル作成のために必要な数学的手法を探索する。 4.数学と社会学理論とを関連付けるためのアイデアを練る。 5.平成9年3月を目標に、本研究の成果をまとめる。 そして全国に散在する数理社会学者との討議を重ね、つぎの結果をえた。 1.社会学におけるミクローマクロ問題の端緒は、Homans,G.C.,1964,"Bringing Men Back In,"American Journal of Sociology 29:809-818に始まる。 2.ホ-マンズが、構造機能主義理論はマクロな水準の現象を実体化することにより、ミクローマクロ問題の解決に失敗し手いる、と判断したことは正しい。 3.しかしホ-マンズの考えは、マクロをミクロに還元するというもので、マクロな事象の自律性を全否定するという錯誤に陥っている。 4.われわれの取れる立場は、「ミクロとマクロをリンクする」というものでなければならない。 以上の認識のもと、主として比較静学とマルコフ連鎖モデルに依拠して、社会学におけるミクローマクロ問題に具体的な解答を与えるようつとめた。その結果、一定の研究成果を冊子体(『社会学におけるミクローマクロ問題-数理モデルによる接近-』)の形で公刊することができた。
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