本年度は村法成立の歴史的意義を追求するという研究目的を達成するために、畿内地域の村落(荘園村落)を対象にして、村落の立地条件、生産構造、生活慣行などを調査した。 調査は、山城国久世荘(東寺領)、山城国伏見荘(伏見家領)、紀伊国鞆渕荘(石清水八幡宮領→高野山領)、紀伊国阿弖河荘(高野山領)において実施した。 阿弖河荘においては、灌漑用水施設の残存状況について聞き取り調査をしたが十分な成果をあげることは出来なかった。鞆渕荘の鎮守をめぐる調査では、和歌山大学の水田教授のご配慮により、鞆渕八幡宮所蔵の古文書(平安時代〜戦国時代)を調査することが出来た。伏見荘の調査では、荘の鎮守である御香宮神社の神楽殿を見学した。この神楽殿において、応永31年(1424)の猿楽・狂言(公家人疲労事)が演じられたのであろう。御香宮神社は、荘民結集の場でもあった。永亨6年(1434)には、村の兵士ら300余人がここに結集して洛中警固に向かっている。 なお村法関係の史料を蒐集するために、滋賀大学史料館において、菅浦文書、今堀日吉神社文書、大嶋奥津嶋神社文書を調査したが、来年度も史料館の調査を継続する予定。
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