研究概要 |
本研究では第1に,市場における情報の多様化と個々の経済構成員の予想形成ならびに意思決定の問題,第2に,情報の多様化と金融・証券市場における価格変動の問題,第3に,内生的不確実性と市場の効率性の問題の研究に取り組んできた. 研究初年度では,われわれが設定した研究の3つの問題分析のうち,第1の市場における情報の多様化と個々の経済構成員の予想形成ならびに意思決定の問題,および第2の情報の多様化と金融・証券市場における価格変動の問題に関する研究をワーキング・ペ-パ-の形にまとめ,内外の研究者の間にサ-キュレートした.この論文の概要は,和文の論文「情報とバブル」としても公刊の予定である. さらにまた,第2と第3の問題意識から,研究初年度の8月に東京で開催されたEconometric Societyの世界大会およびその後京都で開かれた経済理論の国際研究集会の折りに,この問題に興味を持つS.MorrisやB.Allen等の米国からの研究者らと研究討議を行った.世界会議および京都での国際研究集会では,フランスのJean Tiroleおよび米国のEdward Greenと,最近10年間のクロスボーダー経済取引の飛躍的拡大と情報通信技術の革新が経済システムの安定性にどのような影響を及ぼすのか,また,システムの安定性の確保をどのように保障するのかという問題について研究討議した.これらの研究成果については, ″Payment System and Systemic Risk″ および ″Foreign exchange Nettingadn Systemic Risk″ という2つのワーキング・ペ-パ-の形にまとめ,京都大学における国内研究集会,パリ第一大学ATOM研究所,米国フロリダ州Coral Gablesで開催されたThe Organization of Transactions in a Market Economyに関する国際コンファレンスにおいて発表した.
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