研究概要 |
本研究初年度の平成7年度は,第一にOECDのDirection of Tradeの世界各国の貿易統計を年次別に整理するとともに,それと対応した各国の国民所得統計を整備することに当てられた。貿易統計と所得統計が必ずしも対応していないため作業に手間取っている。このデータベースは次年度には利用可能である。第二に,多数国間の貿易構造と価格形成の関連について従来の研究を検討するためにセミナーを開催して共同討議等をおこなった。第三に,平成7年の本研究の開始直前に勃発した阪神淡路大震災を取り上げて,地域経済の復興と貿易の関連について研究をおこなった。鉄鋼・機械など重化学工業の比重の高い神戸経済は7割のコンテナ・バースを破壊されるなど港湾機能は大きく低下した。香港,高雄,釜山,シンガポールとの競争で地位の低下が著しい神戸港が従来通り外貨中心で復興を計ることに展望があるのかどうかが問題である。研究結果としては,最優先すべき雇用の回復は被災者の住宅建設投資と強い関連が存在すること,高齢化社会に向かう地域の町づくりを福祉型産業育成の方向で構想すること,公的住宅建設が我が国の貿易不均衡を緩和する可能性のあること,そして政策の財政的裏付けに関しては公共投資の組み替えで対応可能であること等の検討を行い,従って神戸港の機能も外貿から内貿へ重点を切り換えることが長期的な展望につながるというものである。これに関する研究を二つの論文として発表した。
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