当初予定に沿って以下の作業を並行的に進めた。 (1)国際政治経済学の主要潮流、とくに現実の世界秩序動向に対して少なからぬ影響を及ぼしてきた2大潮流である覇権安定論と相互依存論について、a)それぞれの基本的な論理構成、その特徴、およびそこに内在する問題点、b)もともと相互依存論が覇権安定論のアンチテ-ゼとして登場した経緯からくる両者の相克と、にもかかわらず相互依存論の変質にともなって両者間に一定の共通性ないし共存可能性が生まれるに至った事情、c)わけも国際公共財や国際レジームをめぐって両者の間にみいだされる一面での角逐と他面での実質的な補完関係のあり様、d)上記の諸点とのかかわりでみたポスト冷戦秩序シナリオの諸類型とそれらの基本的性格および実現可能性、を総括的に考察した。 (2)集団的安全保障体制の再編成(国連の再活性化、NATOの東方拡大、日米安保体制の再定義等)、国際経済秩序の動静(GATT体制のWTO体制への進化、他方での進まぬ国際通貨改革、地域経済統合の歩み等)を中心にポスト冷戦世界秩序の現実の動きを究明し、さらにそれをベースにしてパックス・アメリカ-ナIIとパックス・コンソルティスの異同および真に望ましい秩序シナリオ(日本が背負うべき調整コストまで射程に入れて)を考える、という課題に引き続き取り組んだ。 (3)上の2つを重点的な補充的な事項としながら、最終年を迎えた本研究の総括に力を入れ、単著(『国際政治経済学とは何か』青木書店)刊行の手筈を整えた。
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