研究課題/領域番号 |
07640108
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研究種目 |
一般研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小林 亮一 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 教授 (20162034)
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研究分担者 |
吉川 謙一 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 助手 (20242810)
佐藤 猛 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 助手 (60252219)
向井 茂 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 教授 (80115641)
佐藤 肇 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 教授 (30011612)
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キーワード | 正則曲線 / 値分布論 / Diophantine approximation / 分岐個数関数 / 対数微分の補題 / Rothの定理 / 接近関数 / ジェット微分 |
研究概要 |
複素射影代数多様体への正則曲線の値分布論(Nevanlinna theory)と、数体上定義された射影代数多様体上の有理点および代数点の分布(Diophantine approximation)を、統一的に説明する幾何学を探すという問題にとりくんでいる。このような幾何学が建設されれば、両理論における未解決問題が統一的に解けることが期待される。本研究では、まず、Nevanlinna theoryにおける主要予想を数論的設定へ翻訳可能な方法で解決することを目標として、次の結果を得た。 (1)ひとつの高余次元の値分布の問題を、1次元で余次元ゼロの値分布の問題の族に変換するプロセス(Radon変換)を定式化した。このプロセスは、Nevanlinnaの第二主要定理をRothの定理におきかえることで数論的設定に翻訳可能である。しかし、Rothの定理では分岐個数関数が出てこないことが難点であるが、この困難を乗り越える工夫を見い出したところである。この点について検討している最中である。 (2)族の上で、Nevanlinnaの基本関数たちを平均化するプロセスを定式化した。このとき、分岐個数関数の平均をとるためには、古典的なHurwitzの公式を高次元に一般化する必要があった。Nevanlinna theoryにおける新しい知見としては、一般の代数多様体への正則曲線に対する対数微分の補題を定式化しそれを証明したことがある。証明の議論は、従来の方法と全くことなり、Radon変換と平均化の方法による。この方法の優れた点は、例外的正則曲線をとらえる方法を与えることと、重複度の議論との組合せが可能なことである。たとえば、重複度を導入しそれを∞にとばした極限をとることにより、ジェット微分の接近関数ともとの正則曲線の接近関数の間にある極めて非自明な関係式を見い出すことができる。このような関係式は、数論的設定への翻訳において重要である。 (3)正則曲線の高階ジェット微分の住む空間の幾何学を記述を与えた。この幾何学を用いて、高階ジェット微分にも(1)(2)の方法を適用して得られる結果たちを総合的に整理できる。その結果、Nevanlinna theoryにおける主要予想が、少し弱い形ではあるが、証明できた。 (4)以上の研究結果は新しい方法を多く含んでいて、いろいろな例や反例で説明することが必要である。例として、射影代数多様体がAbel多様体のときには最良の主要予想が成立することを示した。以上の結果の一部を上記研究論文に発表した。
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