研究概要 |
本研究は原子核のアイソベクターモノポール共鳴(Isovector Giant Monopole Resonance,IVGMR)の存在を実験的に検証することを目指すものである。大阪大学核物理研究センター(RCNP)のリングサイクロトロンで加速された65A・MeVの^7Liビームを用い、^<12>C(^7Li,^7Be)^<12>B反応によって生成された散乱^7Beを最前方散乱角方向に置かれた高分解能スペクトログラフGrand Raidenで検出した。この^7Beと標的核の周りに置かれた22台のGSOカウンターアレイによって^7Beの第一励起準位からの429keVγ線との同時計数法によってスピンフリップモードとスピンノンフリップモードの分離を行った。更に、標的核から1.5mの所に置かれた48台の液体シンチレーションカウンターアレイによる中性子との同時計数も行い、準自由散乱(Quasi Free Scattering)によるバックグランドの軽減化を図った。 その結果、世界で初めて^<12>BのE_x=20MeVに至るまでの励起状態に関して、スピンフリップモードとスピンノンフリップモードからの^<11>Bの低い励起準位への中性子崩壊を別々に観測することに成功した。特にEx=7.5MeV付近にはGiant Dipole Resonance(GDR)とSpin Dipole Resonance(SDR)が共存することが知られているが、それらの中性子崩壊はお互いにかなり異なった様相を示すことや、GDRの構造でE_x=10.5MeV付近の中性子崩壊確率が異常に大きくなっており、GDR以外の新しい共鳴の存在を示唆している。また、統計模型で計算した中性子崩壊の分岐比との比較から、E_x=7.5MeVの中性子崩壊では1粒子1孔からの直接崩壊の成分が存在しているように見えるが、E_x=15MeV以上では、殆どSpreadしたいわゆる状態になっていることが分かった。これらの実験を通して、初期の目的であるIVGMRの探索の為の有力な手法が確立したものと思われる。
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