研究概要 |
1.平成7年度に設置した,浅間火山山頂火口近傍の地震観測点を拡充し,火口を囲む4つの地震観測点による地震観測網を整備した.データは,既存の光ケーブルにより東京大学地震研究所浅間火山観測所に送られ,定常観測網のデータの一部として記録される.浅間火山でおこる火山性地震・微動は,主に山頂火口直下でおこることが知られているが,本研究によって設置された観測網によれば,これらの震源の深さを正確に決めることが出来ることが期待され,さらに,発生源近傍における観測が可能になったことにより,火山性地震・微動の派生源の性質をより直接的に観測できるようになった. 2.浅間火山では,火山活動の活発化に伴って,N型地震と呼ばれる長いコーダをもつ波形で特徴づけられる地震が発生することが知られている.上記観測網設置後に発生したN型地震のデータを解析し,発生源から放射される波動のスペクトルの性質を明らかにした.特に,N型地震のスペクトルの特徴であるいくつかのピークのうち,発生源における振動の発生に直接関係している成分は最も低周波数側にある主要動のみで,その他のピークは,二次的な原因で発生している,または,非等方的な励起によって発生していることがわかった.同様の波形的な特徴をもつ低周波地震は,草津白根山,キラウエア火山など他の火山でも派生することが知られているが,草津白根山で1992年に行われた山頂火口近傍の集中地震観測で得られた低周波地震のデータを再検討した結果,浅間火山と同様の性質があることがわかった.これにより,低周波地震の発生機構に関して,重要な情報が得られたことになり,低周波地震の発生機構の理解が飛躍的に進むことが期待される.
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