研究概要 |
花崗岩マグマの冷却・固結・結晶過程の比較的早期に結晶した黒雲母と角閃石の化学組成と水素同位体比から花崗岩マグマの成因を探るのが,本研究の目的であった。この方法は黒田吉益名誉教授を中心とする我々日本の研究グループが開発したもので,方法それ自体はすでに確立されルーチンで仕事のできるようになっていた。そしてこれまでに日本および外国の多数の花崗岩体について検討して来たが,なお幾つかチェックの必要のある点が残されていた。今回,日本の山陰帯の宮津花崗岩体,山陽帯の広島花崗岩体およびフォッサマグナの徳和花崗岩体を主としてとりあげ多数の試料から黒雲母と角閃石を分離して分析した。これらの中で宮津花崗岩は本来平衡型の特徴があり,一方広島花崗岩は非平衡型だったと思われるが,いずれもマグマの定置後の熱水作用によって同位体交換を経験したようで,本来の特徴がはっきりしなかった。それに対して徳和花崗岩体は磁鉄鉱系列とイルメサイト系列の両方の花崗岩を含むもので,2つの系列でマグマの水が同じか違うのか注目されたが,この両者の黒雲母・角閃石の水素同位体的特徴は同じで,典型的な平衡型であることがわかった。即ちこのマグマは充分水を含んでいて,黒雲母・角閃石はマグマと平衡関係を保ちながら同位体交換を行って結晶したことが明らかとなった。そして磁鉄鉱系列とマグネタイト系列の違いは相手の水に差異のないことがわかった。これは従来知られていなかった新しい成果である。
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