(1)ユーラシア東部において、最初の被子植物は、白亜紀前期に、手取型植物群と領石型植物群とが混在する地域、すなわち、1)黒竜江省南東部、吉林省南東部および沿海州西南部にわたる狭い地域、および2)韓半島南部から山東半島を経て黄河流域にわたる地域で出現した。 (2)両植物群が混在しない地域では、白亜紀前期被子植物は、まだ発見されていない。おそらく、植生が長い期間にわたり(ジュラ紀〜白亜紀前期)安定し、ほぼ均質な分類群からなる地域(たとえば日本の内・外帯域)では、新しい分類群(被子植物)の出現は行われなかった、または抑制されていたものと推定される。 (3)最初と考えられる被子植物がどのような祖先型から導かれたかの問題は、いまだ解決されていない。祖先を持たない分類群は存在し得ないことから、今後、最初の被子植物の出現直前の裸子植物分類群について、それらの外形だけに止まらず、細胞組織学的研究を行い、それらの被子化の過程を追求する必要がある。 (4)白亜紀前期に、混合型植物群の分布域に出現した被子植物は、その後、白亜紀後期から、その分布を拡げるとともに、多種多様化した。 (5)現在までの知識によれば、白亜紀後期植物群の産地は限られており、また北海道の蝦夷層群産のものを除き、化石の保存状態は一般に不良であるが、今般の、私どもの研究により、蝦夷層群および和泉層群産の分類群が明らかにされつつある。
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