1.ラットの行動時における下肢筋活動の評価:ラットの下肢14筋よりワイヤ電極により、行動時の筋電図を記録した。二足立位や四足静止時に各筋に持続的活動がしばしば観察され、とくにcrouching位でエサ食べ動作をしているときは、長時間にわたり一定で低レベルの活動が観測されたことから、行動時の筋活動レベルを姿勢間、筋間、個体間で比較するための方法として、エサ食べ時のroot mean square(RMS)値を基準とするのが良いと考えられた。 2.二足起立行動におけるラット下肢筋の活動:オペラント条件付けを利用して二足起立行動を学習させたラットを用いて、下肢14筋の活動を記録した。各筋の起立時の筋電図は、エサ食べ時における筋電図出力のRMS値で基準化した相対的RMS値を算出し、比較分析した。股関節周辺と大腿部の各筋は股関節、膝関節、距腿関節が限界近くまで伸展されて、動物が十分に二足起立姿勢に達したとき、大きな活動を示した。相対的RMS値が最も大きかったのは半膜様筋で、以下、大腿二頭筋、半腱様筋、中殿筋、内転筋群、浅殿筋、外側広筋、ひ腹筋、大腿筋膜張筋、小殿筋、大腿直筋、ヒラメ筋、前けい骨筋、大腿方形筋の順に大きかった。これまでにわれわれが明らかにした二足起立負荷にともなう大腿骨断面形態の変化、得られた相対的RMS値と動物の姿勢、筋の配置等を考慮した結果、今回の結果は特定の筋の抗重力活動が骨形態の適応的変化に関与することの直接的証拠と考えられた。 3.2足起立行動がラット下肢筋の相対重量と筋線維構成に及ぼす影響:成長期に二足起立を負荷したラットの下肢28筋の相対重量(体重比)を比較したところ、大腿二頭筋、半腱様筋、内転筋群、浅殿筋等で二足起立の影響による増加傾向が認められた。筋線維の太さは二足起立負荷により増加する傾向を示した。相対重量増加率の大きい大腿二頭筋では、FOG 線維が負荷の影響を受けて増加する傾向を示したが、その傾向は外側部でとくに顕著であった。
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