研究概要 |
音響共鳴冷凍機はCFCやHCFCを使用しない,ガス圧縮式の新型冷凍機で,宇宙用を初めとして小形冷凍機の分野で大きな注目を集め,その開発,性能向上,設計指針などの研究が今まさに進展しようとしているものである.本研究においては,音響アクチュエータ,共鳴管,その中に装着されたスタックからなる音響冷凍機の基本モデルを構成し,冷凍作用の発現の確認,共鳴管内の音響特性,熱輸送の中間媒体となるスタックの温度分布を計測した.本研究で得られた成果は以下のとおりである. 1.作業流体としてヘリウムあるいは窒素を用いるモデルで最大30Kの温度差を実現し,音響アクチュエータの改良によって小形冷凍機として成立する可能性が極めて高いことを確認した. 2.共鳴管内の音響特性は音響振幅が小さい場合には当然の結果ながら線形理論で予測可能であるが,冷凍機として有用な範囲の大振幅状態では非線形性の発現によって線形理論では予測できない.非線形性を考慮したモデルの改良によって基本特性の把握ができるようになった. 3.スタックに沿う温度分布は音響振幅やスタック長さ,音響振幅分布とスタック位置の相対的位置関係によって大きく影響されることが明らかとなった.またスタックを構成する薄板の間隔が熱音響特性に大きく影響し,最適間隔の存在を確認した.スタックに沿う温度分布は音響振幅が小さければ線形理論で予測可能であるが,振幅が大きくなると音響レイノルズ応力の発現に伴う音響流の効果や渦拡散効果のために線形理論による結果と大きく離れてしまう.上記の効果を組み入れた基本的解析モデルを構成してその妥当性の検討を行った.今後さらにスタック近傍の境界層における伝熱機構の解明が必要となるが,新モデルによってある程度定量的な温度分布予測ができるようになった.
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