電気化学的水素透過法を用いてアルカリ環境における鉄不働態被膜の水素と水素吸蔵の関係を調べ、以下の成果を得た。 (1)本年度はアルカリとして炭酸塩環境を選択した。 (2)水素含有量はpHとともに低下したが、pHが7.5以上でむしろ増加した。このような異常な現象は炭酸塩が共存しないと生じない。 (3)pHの増加とともにアノード分極は低下し、特にピーク電流は増加した。 (4)pHの増加とともにカソード分極も低下し、その結果腐食速度が増加した。 (5)腐食生成物は低角度X線回析での結果、炭酸鉄であり、その下にセメンタイトが認められた。また、被膜厚みはpHの増加とともに薄くなった。 (6)(2)の異常現象はpHの増加に伴い、HCO_3-イオンが増加し、このイオンからの水素発生反応の促進で説明できる。 (7)走査振動電極を用いた結果、昨年度のH_2S環境と異なり見掛け上全面腐食の様子を呈した。
|