研究概要 |
1984年に文部省「環境科学」特別研究の一環として自然保護と森林開発の関係を事例的に明らかにするために南アルプスの林道建設をめぐる過程が取り上げられている。以来,現在まで12年,林道が開通して15年という年月が経過した。地元山村の直営によるバスの運行で登山利用が行われるようになり,また林道の管理が地元山村にあることで日頃の管理を担当するとともに,災害時の対処などの負担が生じた。利用者に対して地元山村では宿泊施設の拡大整備の必要を主張するようになり,また自然災害に対処して治山砂防事業が進展している。こうした変化があるものの自然環境の人為的な破壊はみられず,登山利用の場所として持続的に利用が行われている。これらの経過と実態を明かにし,自然環境を保全することを通じて,山村社会の持続可能性を探ることが今回の共同研究の目的である。 自然災害を伴いながら循環的に持続する原始的な自然環境の構造を馬場多久男を中心に明らかにする。その自然環境を登山利用する実態と動向を伊藤精晤を中心にとらえる。過去に森林資源によって成り立った山村社会の動向を菅原聰を中心に明らかにする。山村社会の動向は信州大学農学部森林科学科の教官を中心にして1988年から1992年の5年間にわたって長谷村と協力して行った公開講座から佐々木邦博と伊藤精晤が明らかにする。さらに以上を総括するものとして山村社会の持続可能性を糸賀黎が論じる。また,今回資源の把握,評価と蓄積に地理情報システムとしての分析が有効ではないかと検討を進めた点を佐々木邦博が報告する。
|