イネ品種朝日及びヒメノモチからの突然変異イネ関口朝日および関口ヒメノモチをそれぞれ用いて品種・レース特異性に関与する因子を検索した。イネ品種関口朝日(Pi-a)の葉身に非親和性いもち病菌を噴霧接種すると関口病斑が形成されたが、親和性いもち病菌では関口病斑と共に紡錘形のいもち病斑が形成された。関口病斑の80%メタノール抽出物中には、ファイトアレキシンであるサクラネチンが蓄積していることが判明した。一方、親和性いもち病菌長69-150菌株(007)の胞子発芽液のメタノール可溶部及び不溶部を関口朝日葉身に有傷滴下し、18時間後に非親和性菌SH85-125菌株(001)を接種した。その結果、メタノール可溶部の前処理葉では関口病斑の形成が抑制された。病原性を異にする6菌株を用いて同様の実験を行ったところ、いずれの菌株の場合もメタノール可溶部に非親和性菌による関口病斑形成を抑制する作用のあることが判明した。抑制の程度は菌株により異なったが、レース特異性は見られなかった。同様の抑制現象は、イネ品種ヒメノモチから得た突然変異イネの関口ヒメノモチ(Pi-k)でも観察された。これら突然変異イネにおける関口病斑の形成は、いもち病菌感染に対する抵抗反応の表れと考えられることから、いもち病菌の胞子発芽液中にはイネの抵抗反応を抑制する因子の存在が示唆された。
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