研究概要 |
平成8年度は,平成7年度の研究結果を基に,さらに一般性を持たせるために研究計画に基づきカイコの飼育実験および営繭行動の測定実験を引き続き行った。また,これらのデータ解析に基づく行動の確率過程モデルの作成を行った。その結果,次の問題に関して多くの知見を得ることができた。 1.繭形形成時の蚕の体形分布およびその時間的特性 蚕繭行動時の体を三角形で表示することにより,Bookstein形状変数を用いて,この分布形状をデータより計算し,実際の分布の品種間比較を行った。その結果,天蚕が他の家蚕に比べて著しい特徴を示すことがわかった。また,各品種に対してカ-ルバックライバー情報量を計算し,品種間の相互距離を求めた。さらに,時間パラメータを導入するため,形状変数値の時系列データから自己相関係数を計算し,その特徴を抽出した。 2.体形分布の確率モデル 1で行った形状分布のモデルとして正規分布を仮定し,その妥当性を検討した。その結果,特別なものを除きほぼ正規分布で近似できることがわかり,確率過程モデル作成の基本分布の一つが同定できた。同時に特性パラメータの推定方法についても検討した。 3.吐糸方向の移動モデル 営繭中の吐糸方向変化の基本モデルとして平成7年度に検討したFisher分布に加え,ケント分布を仮定し,吐糸方向の移動の特性をパラメータで表示する試みを行った。さらに,これらのシミュレーションについても検討を加えた。その結果,吐糸方向の移動モデルの基礎をつくることができた。
|