平成7年度における大規模農業を展開している生産組織と会社経営によるファーム・コントラクターの展開条件に関する調査資料を踏まえた概要は次のようである。 ファーム・コントラクターについては、経営主体別に農業サービス事業体をみると地方公共団体や会社経営による農外企業等の参入が、当初の予想に反して極めて少ないことが判明した。これには、本年度の実態調査でにもみられるように、バブル経済崩壊とともに解散したものもみられる。 大規模農業生産組織については、畑作生産組織の実態調査を行って当初の計画に沿った資料を収集できた。この概要では網走市を中心に大小合わせると約60組織に及ぶ生産組織の財務、生産力、土地利用等に関する資料をもとにした概要については、一概には結論を出せない。特に財務構造の内容については生産組織自体が収益事業体を含むものと、そうでない生産組織の機械等の共同利用部分だけの生産組織では、省コスト化を図り個別経営の費用負担を低減することを目標にしているために、生産組織自体は利益を最小限おさえた財務構造になっていることから分析視角を明確にする必要があるので生産組織の評価方法の検討が必要である。しかし、今回の調査資料は生産力や財務については完備しているので分析視角と評価方法を設定することで新たな知見が得られる。また、生産組織が農業法人化するためのメカニズムと成立条件を明らかにするために、同一地域内に成立している農業法人の調査も並行して事例調査を行ってみたが、会社経営によるファーム・コントラクターとは異なる知見が得られそうである。それは現在存立している農業法人が発展的に成長しえない限界や問題点が存在している。このことは生産組織が農業法人化した場合に、遭遇すると思われる先導的な問題点でもある。したがって、会社経営によるファーム・コントラクターの調査結果の分析に待たねばならないが、そこから抽出されてくる課題や問題点は生産組織の法人化=企業化に向けた一連の発展的課題として、また成立条件とどう関連しているのか興味深い。
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