平成9年度は、主に、第三セクターや農業公社など行政あるいは農協主導型の農業支援組織および地域ぐるみ型の任意組合などについて実態調査を実施した。 第三セクターおよび公社方式では、市町村あるいは農協などからの支援がなければ組織の存立そのものが難しい状況ある。すなわち、農家からの利用料収入だけでは経営が成り立たない。農業生産の季節性のため、農閑期に専任職員の労働力が十分消化しきれないことが最大の理由ではあるが、作業能力や需要があるにもかかわらず、市町村・農協の範囲を越えてサービスを展開することができないことも背景となっている。これら事業体がおかれている市町村に隣接する地域で、同様の事業体が必ずしも育成されていないことを考慮すれば、事業体の経営サイズに応じた範囲にサービスを提供できるよう、組織形態を改善する必要があると考えられる。そうすることで、農家にはサービスを提供し、事業体自体はより企業的な経営へと転換できるのではないか。 一方、地域ぐるみ型の任意組合でも、米麦を中心とする土地利用型農業では年々収益性の低下がみられる。そのなかで、育苗、圃場作業、乾燥作業などをそれぞれ事業化し、利益をあげている組合が注目される。それらで特徴的なのは、多数の組合員に組合の経営内容を理解させるよう、緻密な部門計算を実施していることである。出資と配当との関係を明確にすることで、組合員の経営に対する意識を高め、より高い収益性=企業化をめざす原動力ともなっている。 農産物価格の低迷と景気の低迷双方の影響から、わが国において企業として成立しているファーム・コントラクターを見いだすことは大変困難であった。しかし、多数の大規模経営あるいは支援組織の事例調査から、その成立条件あるいは企業的経営への転換条件を抽出できるに至った。
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