研究概要 |
今だ病因が明らかでない高血圧症患者の中には食塩摂取により血圧が上昇するヒトとしないヒトが認められる。このような食塩感受性の違いをもたらすメカニズムも明らかでないが,一つの仮説として食塩負荷に対する腎交感神経活動(RSNA)の反応の違いが挙げられている。RSNAは容量負荷あるいは食塩負荷時,減少することによりナトリウム・水の排出を促し体液の恒常性を維持している。この調節系の破綻が食塩感受性となんらかの関連があるかどうかを検証することを目的とした。普通食で飼育した意識下Dahl食塩感受性ラット(D-Sラット)とDahl食塩抵抗性ラット(D-Rラット)を用いて,脳内食塩投与後の血圧,心拍数と腎交感神経活動(RSNA)の変化を調べた。 1.自由行動,意識下で記録したRSNAに特異な発火パターンが認められた。心拍に同期した群発活動以外に心拍に同期性を示さず持続時間が短いスパイク様活動がしばしば観察された。前者は塩化フェニレフリンの静脈内投与で血圧を上昇させた時,圧受容器反射により減少し,ニトロプルシドナトリウムで血圧が低下すると逆に増加したが,一方後者は圧受容器刺激に反応しなかった。しかしいずれも神経節遮断剤の臭化ヘキサメトニウムで消失したので遠心性交感神経活動であると思われる。D-S,D-Rいずれのラットでもこのような活動パターンが認められた。 2.脳内への食塩負荷として0.15M,0.30M,0.67Mと1.0M NaCl溶液を用いた。投与方法はbolusあるいは1μ l/minの速度で20分間行った。血圧の上昇とRSNAの低下が認められたが,心拍数は有意な変化を示さなかった。我々の作業仮説に反して2群間でRSNA反応に大きな差異は認められなかったが,先に述べた特異な神経活動との関連で現在解析を行っている。
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