研究概要 |
ラジカルスカベンジャーであるグルタチオンの細胞での合成の律速段階となる、システインの細胞への供給を担当するシスチン・グルタミン酸交換輸送体(輸送系x_c)のcDNAクローニングに向けた一連の検討を行った。組織あるいは培養細胞由来のpoly(A)^+RNAをXenopus卵母細胞へ発現させ、^<14>C-シスチンの取り込みを測定しところ、マレイン酸ジエチル処理マウスマクロファージ細胞株J774A.1に有意のNa^+非依存性のシスチンの取り込みが観察された。そのシスチン取り込みは、非標識グルタミン酸及び輸送系x_cのインヒビターとして知られるL-α-アミノアジピン酸によって抑制されたが、アスパラギン酸、リジン、ロイシンによっては抑制されなかった。さらに、このシスチン輸送は、共発現させたグルタミン酸トランスポーターEAAC1を介してグルタミン酸を卵母細胞に前負荷することによって増強された。これらの性質は輸送系x_cのそれと一致するものである。マレイン酸ジエチル処理J774A.1から抽出したpoly(A)^+RNAを分取用ゲル電気泳動によりサイズ分画し、^<14>C-シスチンの取り込みのピーク活性を示す画分から発現プラスミドライブラリーを作製し、Xenopus卵母細胞に発現させ、シスチンの取り込みを指標にスクリーニングした。14,000個のクローンをスクリーニングしたが、シスチン取り込みを示すcDNAは検出できなかった。再度、他のマウスマクロファージ細胞株RAWを用いて同様に発現クローニングを行ったが、目的のcDNAは検出できなかった。最近研究代表者らがクローニングしたアミノ酸輸送系と同様、輸送系x_cもヘテロダイマー構造を取りその機能発現に補助因子を要求する可能性があり、補助因子と予想される各種タンパク質分子との共発現による発現クローニングを試みる計画である。
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