1.ラット血清よりトランスサイレチンのアフィニティ・カラムを用いてレチノール結合蛋白(retinol binding protein:RBP)を単離精製した。このRBPを^<125>Iで標識し、培養7日目の伊東細胞を用いて取込実験を行った。取込量は100倍量の非標識RBPにより競合低下しなかったことから、特異的取込は少ないものと考えられた。当初の予想に反した成績を得た原因として、RBPが単離過程において高次構造上変化し細胞への取込に影響を及ぼしたこと、伊東細胞の単離精製の過程で細胞表面の受容体が変化したことが考えられる。しかしながら我々のこれらの条件は伊東細胞におけるRBPの特異的取込を報告したBlomhoffらのものと同一である。伊東細胞におけるRBP受容体の存在については、現在改めて議論の対象となっている。我々の成績はこの存在を支持するものでなく、これを前提とした伊東細胞をターゲットとするドラッグ・デリバリー・システムの確立は再考を要するものと考えられる。 2.導入する特異的コラーゲン合成抑制剤として、コラーゲンのアンチセンスの効果を培養伊東細胞に直接添加することにより検討したが、50μMの濃度でもコラーゲン合成抑制作用は認められなかった。アンチセンスの分解を抑制し、細胞に効率良く導入するシステムが必要であると推定される。 3.アンチセンス以外に使用し得る副作用の少ないコラーゲン合成抑制剤として、トランラストの効果を培養伊東細胞において検討した。トランラストはTGFβ1の遺伝子発現抑制を介してコラーゲン合成を遺伝子レベルで低下させた。肝線維化の治療薬として有望であり、ドラッグ・デリバリー・システムにおいて使用する価値のあるものと考えられた。
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