研究概要 |
平成7年度の研究によって以下の事柄が明らかになった. 1.酸素ストレス誘導性細胞死はmtDNAの酸化的損傷が関与する. (1)正常mtDNAを持つヒト皮膚繊維芽細胞(ρ^+)と,これより由来しmtDNAを欠く細胞(ρ^o)を95%高濃度酸素下で培養し,この際に出現する細胞死を観察した。その結果,ρ^+細胞が強い細胞死(酸素負荷3日目,4日目でそれぞれ68%,84%の細胞が死滅)を示したのに対して,ρ^o細胞は酸素ストレスに対して強い抵抗性(負荷3日目,4日目で26%,44%の細胞が死滅)を示した. (2)ρ^+細胞における酸素ストレス細胞死の過程で,mtDNAの欠失の種類が著明に増加し(49種から187種),mtDNAの酸化的損傷が細胞死において重要であることが明らかになった. 2.ミトコンドリア病細胞は酸素ストレスに対して脆弱である. (1)ヒトミトコンドリア病(MELAS,MERRF症候群)の病因となるmtDNA変異(tRNA領域)をヒト骨肉種由来のρ^o細胞に導入した細胞(syn^-)に,酸素ストレスを加え,ρ^+およびρ^o細胞における細胞死と比較した.その結果,syn^-細胞は酸素ストレスに対して極めて脆弱であった. ρ^o細胞においてはヒドロキシラジカル産生が低下(ρ^+細胞の58%),syn^-細胞においては上昇しており(140-152%),細胞死の出現と活性酸素種の産生が密接な関係があることが示された.
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